WEST COAST CHILL

2012年、アメリカで世界初となる自動冷却システムを搭載した缶に充填され発売されたのが「WEST COAST CHILL」です。ボタンを押して少し待てば、缶の温度が約30℃下がり、キンキンに冷えたエナジードリンクが楽しめました。
その後、この自動冷却システム搭載の缶は姿を消し、通常のアルミ缶で流通するようになります。今回レビューしているのは、2014年にロサンゼルスで何とか入手できたWEST COAST CHILLです。
このレビューでは、フレーバーの詳細に加え、デザインや自動冷却システムの構造などを歴史的資料として詳しく解説します。
WEST COAST CHILLの基本情報
| メーカー | WEST COAST CHILL |
|---|---|
| 製造国 | アメリカ |
| 価格(購入時) | 2.99 USD |
| 味 | 薬品・ケミカル系 |
| 総合評価 | ★★☆☆☆ |
著者:エナジー・ドリン君
2001年頃、在米時にダンスシーンを通じてエナジードリンクに出会い感動。 帰国後日本ではネタ飲料扱いだったエナジードリンクの本当の魅力を伝えるために2013年総合サイトを開設。 エナジードリンクマニアとして改めてエナジードリンクを真剣に飲み始め、各国で狩りをして飲み集めたコレクションは世界8,000種類以上。 メディア取材を受ける評論家や専門家としても活動中。
WEST COAST CHILLの味
開栓するとケミカル感あるぶどうの酸味を感じる香りがほのかに香ります。香料自体はかなり軽やかで他の王道系フレーバーのような強い香りではありません。では飲んでみましょう。

口に含むと強烈な酸味に続いてビターなケミカル風味が広がります。飲むとケミカル香料がかなり強く、飲んだあとも胃の奥からケミカルビターな風味が立ち上る感覚があるほど。
当時のロックスターオリジナル(2020年以前のペプシコ買収前のロックスター)と同等の強烈なケミカル風味が特徴です。最近だとここまで強いケミカルフレーバーはなかなかないでしょう。
王道系フレーバーの甘味や旨味はなく、ゼロシュガーらしい物足りなさが目立ちます。個人的にはもう少し飲み応えがほしかった・・・。
かなり不健康でケミカルな味わいなのに、実際の成分はゼロシュガー・ゼロカフェイン、そして人工甘味料すら使っていないという、意外なほど健康志向の組み合わせがWEST COAST CHILLの特徴なんです。
缶正面に「PURE ENERGY」と書かれているのは「不純物を含まない」という意味が込められているのかもしれませんね。
WEST COAST CHILLのエナジー成分

アルギニン、高麗人参、亜鉛、シチコリン、アミノ酸配合。
ノンカフェインであることもWEST COAST CHILLの大きな特徴でしたが、2010年代当時のアメリカではこの点がエナジードリンクとして受け入れられなかった要因のひとつだったと感じています。
ゼロシュガー、ゼロカフェイン、ゼロ人工甘味料、ゼロ着色料、ゼロ人工香料。10年以上先を行き過ぎて上手くいかなかった代表例とも言えます。
WEST COAST CHILLのデザイン
青く輝き雪が積もるWEST COAST CHILLのロゴが特徴的。このダークでアングラな雰囲気を冷感とともに表現したブランドイメージは「WEST COAST CHILL」というブランド名や製品特性を象徴した唯一無二とも言えるデザインです。

缶上部には氷の洞窟を思わせる表現もブランドイメージとぴったりですね。
缶の横と後ろには「No」が5つも並んだ、発売当時としてはあり得ない成分構成の特徴が書かれています。

カフェインが入っていないエナジードリンクは当時のアメリカでは非常に珍しい存在でした。
WEST COAST CHILLと特殊な缶について
今回レビューしたWEST COAST CHILLは通常のアルミ缶に充填された商品で、WEST COAST CHILLが終売になる最後の直前の姿です。
本来は缶底にボタンがついていて、そのボタンを押すと一気に冷却される「自動冷却システム」を搭載した「Chill-Can」がWEST COAST CHILLの最大の特徴でした。2014年から何度も渡米するたびに「Chill-Can」を探していましたが、結局探し出すことは出来ず、WEST COAST CHILLは静かに終売になりました。
この冷却システムはアメリカのエナジードリンク史の中でも画期的な発明のひとつであり、歴史として後世に確実に残しておくべき貴重な情報なので詳しくまとめました。
WEST COAST CHILLの自動冷却システム「Chill-Can」
缶の中身を瞬時に冷やす自動冷却システム「Chill-Can」はアメリカの「Joseph Co. International」の技術です。WEST COAST CHILLで使われた「Chill-Can」が完成するまでの経緯を簡単にまとめました。
Chill-Canの開発の経緯
最初のChill-Canは冷媒として「HFC134A」を使用していました。しかしHFC134Aは廃棄時に回収が必要で環境負荷の懸念があり、量販には不向きでした。
そこで冷媒を活性炭へ変更します。しかし活性炭では量産コストが高くなってしまうため、最終的に液化CO2を採用し、現在の形に至りました。ここまでに25年かかったとのこと。
「Joseph Co. International」は、缶に内蔵された熱交換ユニットと大気中の二酸化炭素を組み合わせて缶内部を冷やす「Chill-Can」の特許を取得しています。
プッシュ型のChill-Canとツイスト型のChill-Can
初期のChill-Canは缶底にあるボタンを押すことで冷却が始まるプッシュ型でした。

このボタンを押すと冷却が始まります。現在はブランド自体がなくなってしまいましたが、WEST COAST CHILLの公式YouTubeチャンネルだけは残っていたため、ボタンを押すとどのような冷却が行われるかを見ることが出来ます。
まず常温であることを確かめてもらい、ボタンを押すとシューッという音ともに冷却が始まります。冷たくなった缶を触ってもらうと観客は驚く、という動画です。
WEST COAST CHILLには採用されませんでしたが、Chill-Canはその後も進化を続け、後期モデルでは缶底のグリップ部分を捻るだけで冷却が始まる「ツイスト型」が登場しました。

このリニューアルが行われた理由は、従来のプッシュ型は押し込みに力が必要で、押し込みが不十分だと冷却が正常に作動しないという欠点があったためです。そこで後期モデルでは、確実に作動するツイスト型が採用されました。
30分以上も冷たさが持続するChill-Can
Chill-Canは冷蔵庫で冷やした缶飲料とは違い、液体の内側から冷却し続けるため外気温によって液体が徐々に常温になりにくいとのこと。
冷蔵庫などのように缶の外部から冷やすのではなく、缶の内側から周囲の液体を冷やすのです。このため、CEOのジョセフによれば「30分以上冷たさが持続する」とのこと。
Chill-Canは非常に画期的な発明でしたが、WEST COAST CHILLは途中から通常のアルミ缶で販売されるようになりました。その結果、自動冷却システムを備えたエナジードリンクは姿を消してしまいました。
2019年まではChill-Canによる飲料を発売していたようですが、現在はなくなってしまったようです。
エナジー・ドリン君の独自評価
- フレーバー

- 香り

- 重さ

- 爽やかさ

- モグモグ感

